『 ウチ ― (1) ― 』
ぴゅう~~~~~~ ・・・・・ !!
つめた~~~い風が 埃を巻き上げ吹き抜けてゆく。
うわ ・・・ きゃ ・・・ 道ゆく人々はコートの襟を立て
マフラーに頤を埋め 背を丸め ― 脚をはやめた。
「 きゃ ・・・ 」
フランソワーズもお気に入りのマフラーを目の下まで引き上げた。
「 さ む~~い~~~~ ・・・ はやくウチに帰ろうっと・・・
寒いけど~~ えいっ !! 」
岬の家の若奥さんは ママちゃりのペダルを踏み込んだ。
「 う~~~ 風が冷たい~~~ けど がんばるぅ~~~ 」
彼女のすうぃ~と・ほ~む は 急な坂を登った上。
寒い日でも 焦げそうに暑い日でも えっちらおっちら登ってゆかねばならないのだ。
そりゃ いくらサイボーグだって辛いし やっちゃらんね~な と思うこともないわけじゃない。
けど ・・・ 。
びゅう ~~~~ また風が吹き抜けてゆく。
「 ひゃあ~~~ さむ~~い~~~~ 」
門を開け 自転車を止めるとフランソワーズはダッシュする。
バタン。 玄関のドアを開け バタンっ リビングの扉をあけ
しゅっ ぱふん。
彼女は 派手~~は花柄の布団の中・・・ いや コタツ に滑り込んだ。
「 ~~~~ ん~~~~~ あったか~~~い~~~~~~
へへへ リモコンでスイッチ オン にしといたのよねえ~~
しっかりいい温度~~~♪ 」
天板にほっぺを当てれば じんわ~~~り 温かさが染み入ってくる。
「 わはは~~ん♪ な~~んて素敵なのぉ~~ コタツって♪
ああ ・・・ ニホンジンと結婚してよかったぁ♪ 」
この金髪碧眼のパリジェンヌは 極東の国の青年と ― まあ いろいろあって・・・
ありすぎて~~ 結婚しなんと双子の子供たちに恵まれ
コタツ と遭遇する、という幸福をゲットしたのである。
崖の上に建つこの邸 ― 一見 ちょい古びた洋館っぽいのだが
内部は最先端の科学技術の結集、もちろん冷暖房完備だ。
四季を問わず一年中 超快適な環境で過ごすことができる。
しかし 住人達は自然と共に暮らしている。
たとえば 夏。
― カラリ。 フランソワーズはテラスへの窓を全部開けた。
しゅるり ・・・・ しゅるしゅる ・・・ 透明な風が吹いてくる。
「 あら。 クーラーよりも 窓をあけていい風を入れる方が気持ちいいわ 」
「 そうだね~~ ウチはいい海風が吹き抜けるものね 」
夏には彼らはほとんどクーラーなし、 扇風機くらいで過ごす。
「 ウチはすずし~ね~~~ あは~~ かぜ~~~~ 」
姉娘のすぴかは テラスの柵にすわってびゅんびゅん風に吹かれている。
「 うふ~~~~ すずし~~~ ばふばふばふ~~ 」
ジョーの縮小版・すばる は Tシャツの裾をめくって風を追う。
「 博士 はい 冷たいお茶です。 あのお暑くないですか?
クーラー、いれます? 」
これもテラスで書物を広げるギルモア博士に声をかければ ・・・
「 おお ありがとうよ ・・・ いや 自然の風がいいよ
すばる、蝉の抜け殻は集まったかい
」
「 うん おじいちゃま~~ ねえ こっち、大きさがちがうし・・
あ ぜんぜん形がちがうよ? 」
「 どれどれ ・・・ ほう~~ すばる、この二つ どう違うかなあ
」
「 えっとぉ~~ ・・・・ あ! アシの付き方がちがう!
こっちはあ~~ 」
すばるは とても熱心に観察をしている。
「 ふむふむ なるほど。 よいところに着目したなあ それで? 」
「 えっと ・・・ 」
「 ふふふ ・・・ 頑張ってね。 すぴかさ~~ん 冷たい麦茶 のむ? 」
母は テラスの先ッちょにいる娘に声をかけた。
「 のむ~~ ねえ おか~~さん。 なつ と ふゆ って
おそらのあおいろ が ちがうね? 」
「 はい お茶。 え そう? どうちがうの? 」
「 ん~~~ っと 今は きらっきらの青。 そんで ふゆはあ ・・
つ~~~んとすきとおる青 かな 」
「 まあ ステキな発見ねえ すぴかさんはなんでもよく見てるのねえ
」
「 えへ ・・・ だってキレイなんだもん 」
「 そうね お空は ・・・ とても綺麗だわ 」
「 でしょ? アタシ いつ~~もお空がすき! 」
母に似た金色の髪を ( もっとも すぴかはぎっちぎちのお下げに編んでいるけど )
振り回し すぴかは に~~っと笑う。
「 ふふふ ・・・ だからすぴかさんはお空と同じ色の瞳なのね 」
「 え~~~ おか~さんと同じ色だよぉ~~ 」
「 あは そうねえ 」
「 うん♪ えへへ~~~ 」
ずずずず~~~~ すぴかは派手な音でストローを吸った。
「 あ こらあ~ お行儀悪いわよ 」
「 えへへ~~ あ~~~ オイシかったあ~ 」
「 風は通るけど やっぱり陽射しが熱いわねえ ・・・
葭簀 ( よしず ) を掛けましょうか。 すぴかさん 手伝って ? 」
「 うん いいよ~~~ おか~さん 」
「 よいしょっと ・・・ 」
フランソワーズは テラスの隅に立てかけてある葭簀を運びだした。
「 こっち側、 持って。 」
「 うん よいしょ~~ 」
「 あ! ぼくがやるよ。 」
ジョーが 庭から飛んできた。 彼は庭に水撒きをしていたのだ。
「 あら ジョー 」
「 おと~さん 」
「 危ないってば。 ぼくに任せて~~ 」
彼はひょい、と葭簀を持ち上げた。
「 わ~~ おと~さん すご~い~~~ 」
「 ふふふ さすが ジョーねえ 」
「 おと~さん すごい~~ 」
すばるも寄ってきて 父に纏わり付く。
「 あ こら~~ 危ないからちょっと離れて 」
「 う うん 」
「 よ・・・いしょっとぉ ~~~ 」
ジョーは 手際よくテラスの上の梁に葭簀を掛けていった。
陽射しは適度に遮られ 海風の涼しさがますます際立ってくる。
「 お~~ これはいいなあ ジョー、ありがとうよ 」
博士も目を細めている。
「 さあ これでいいかなあ 」
「 ええ ありがとう ジョー。 冷えた麦茶、どうぞ? 」
「 お ありがとう。 ・・・ んま~~~ 」
「 僕もぉ~~~ おか~さん おさとう 入れてぇ 」
「 はいはい 」
「 すずし~ね~~~ おと~さん。 ウチはさあ 学校よかすずしいや 」
「 ウン! 学校さあ く~ら~ いれてるから 窓、開けちゃいけないんだ 」
「 ね~~ 風がきもちい~~のにね~~ 」
子供たちは Tシャツの裾をひゅるひゅる風に吹かれはしゃいでいる。
「 クーラー いれるかい? 暑ければ ・・・ 」
「「 あつくないもん 」」
「 博士? ご無理なさらないでくださいね お暑ければクーラー いれます。 」
「 このままがよいよ。 チビさん達と一緒じゃ 」
「 あ それじゃ晩御飯はテラスでいただきましょうか 」
「 お いいねえ~~
」
「 わあ~~ お外でごはん? わ~~い 」
「 すご~~い~~~ 星がみえるかなあ 」
「 うむ 夏の星座を見ようなあ 」
「 あ そうだ~~ 今日のオヤツはね~ トクベツなんだよ? 」
ジョーがにこにこ・・・子供たちを見回す。
「 え~~~ なに~~~ おと~さん 」
「 なに~~ なに~~ 」
「 えへへ なにかなあ~? ヒント。 夏の果物だよ~ 」
「 夏の? ん~~~ ・・・ あ すいか! 」
「 スイカだあ~~~ 」
「 大当たり♪ 今朝ね~ 畑から収穫したとれとれのスイカさ 」
「 わあ~~い♪ アタシ、スイカだいすき~~~ 」
「 僕も~~~ ね おと~さん トクベツってぇ~ とくべつおっきいの? 」
すばる が茶色の瞳をくりくりさせつつ聞いてきた。
「 あは よく聞いてたね~~ 大きさは ・・・ まあ普通だな。 」
「 それじゃ~ トクベツあまい の? 」
「 多分甘いと思うけど それは食べてみないとわからないよ 」
「 え~~~ じゃあ ・・・? 」
「 ふっふっふ~~ そのスイカは 今どこにいるかな? 」
「 え れいぞうこ でしょ? 」
「 ぶっぶ~~~ 」
「 え ~~ どこ??? 」
「 それは ね。 井戸 さ。 」
「 ? い ど? なに それ 」
「 いど ってなあに? 」
子供たちは きょとん、としている。
「 あらあ~~ この邸に井戸があるの? 」
「 ほっほ ・・・ ジョー 知っておったのかい 」
オトナ達も目を丸くする。
「 はい 博士。 あのね、すぴか すばる。 ガレージの裏にね、井戸が
あるんだよ。 今まで使ってなかったんだけど すごく冷たいお水なんだ 」
「 いど って お水があるとこ? 」
「 すいどう とはちがうの ? 」
「 井戸はねえ ふか~~~く掘った穴なんだ。 した~~~の方にお水がある。
昔、水道がなかったころは 井戸からお水を汲んでいたのさ。 」
「 くむ・・・って なに? 」
「 あ お水をね バケツみたな物使って上までもってくることなんだ。
そのお水は 夏はきんきんに冷えてて 冬には温かいのさ 」
「 ふう~~ん アタシ 井戸、みたい! 」
「 僕も いど みる! 」
「 わたしも見たいわ~~ ガレージの裏? 」
「 じゃあ 皆でゆこうか? もうね スイカが冷やしてあるんだ ~~ 」
「 「 うわ~~~ い 」」
「 わたしも わ~~~い♪ 」
それじゃ・・・と ジョーはチビ達とそのお母さんをつれて 井戸見学 に行った。
― そして その日のオヤツ・タイム~~
「 ほうら ・・・ 井戸から今、 上げてきたよ~ 」
「 うわあ~~~ ・・・ つっめた~~~ 」
「 つめたっ! ねえ いどのお水 こおりなの? 」
「 あはは 氷じゃあないよ。 さ~~ これから切り分けるからね~~
お父さんは まな板と包丁をもってくるから すぴか、お皿を出してくれるかな。
すばる 布巾とタオルを持ってきて 」
「「 はあ~~い 」」
子供達は 先を争って父の手伝いをする。
「 それじゃ 切るね~~~ 」
「「 ん ・・・ !! 」」
サク ッ ・・・・ トン ・・・ !!
大玉のスイカは ぱっか~~~んと割れ 真っ赤な果肉を見せる。
「 う わ ♪ おいしそ~~~ 」
「 おいしそ~~~ 」
「 ほらほら ・・・ 皆にくばるよ~~ 」
サクサク 半月に切り分け皿に盛った。
「「 いっただっきまあ~~~す 」」
かぷり と かぶり付き ―
お いし~~~~ !! ひえひえ~~~~!!
「 うむ ・・・ 冷えすぎてないから余計に美味いのじゃな 」
「 本当・・・ 冷たさと甘さがちょうどいい感じ。 」
「 ね? 自然の力で冷やしたからね~~ 」
オトナ達も 舌鼓をうつ。
「 井戸って初めてみたけど ・・・ なんか怖いくらい深いのね 」
「 うん だからこんなに冷たい水なんだろうね。
ま~ 飲めないけど果物なんか冷やすのにはちょうどいいよ。 」
「 うむ うむ ・・・ 人々は上手に自然と付き合っていたのだなあ 」
「 そうですねえ。 ウチもできるだけ自然に暮らしたいわ 」
「 ここは十分快適だよね 」
「 うふふ ・・・ ウチは最高よ♪ 」
暑い日々も 彼らはその暑さと上手に付き合い過ごしていた。
そして 冬。
ひゅるるるる~~~~~ ・・・
温暖な土地だが 冬にはやはり冷たい風が吹いてくる。
人々はヒーターの温度を ぐっと上げる時期となる が。
岬の邸の人々は昼間はヒーターはいれない。
大きな窓のリビングは 冬でもいっぱいに陽光が満ち、温かいのだ。
そして ―
「 た だいまあ~~~ 」
「 ・・・ ただいまぁ 」
チビ達もお顔を真っ赤にして帰ってくる。
「 はい お帰りなさい すぴか すばる 」
お母さんはいつだって笑顔で玄関のドアをあけてくれる。
「 アタシ~~ 寒いからぁ~~ 走ってきた! 」
「 ・・・ 僕はぁ~ ゆっくり歩いてきたんだ~ 寒かったあ 」
「 寒かったでしょう? さ 手を洗ってウガイして 」
「 オヤツ! 」
「 僕ぅ~~ びっくりまん・ちょこ~~ 」
ダダダダ ~~~~
チビ達はランドセルを背負ったままバス・ルームに駆けていった。
「 あらら ・・・ まあ いいか。 ちゃんと手、洗うのよぉ~~ 」
「 「 うんっ !! 」」
ダダダダ ~~~~
ランドセルと共にチビ達は リビング目指し駆けてきた。
「 アタシ~~~ いっちばんっ ! 」
「 僕もぉ~~~ いちばん~~~ 」
バタンッ ! ふぁさ~~~ しゅるっ どん。
すぴかとすばるはリビングの真ん中にある コタツ に 滑り込んだ。
「「 ん~~~~~ あったか~~~~~~~ 」 」
「 あらら ・・・ 二人ともランドセル、 お部屋に置いてきたら ? 」
「 う~~ いい。 アタシ、 ここでしゅくだい するから 」
「 僕もぉ 」
「 あら そう? それなら オヤツの前に宿題、やっちゃう? 」
「 ・・・ う ・・・ オヤツ たべながら~~ だめ? 」
「 僕ぅ~ おなか すいたぁ~~ 」
「 それじゃ 先にオヤツね。 食べたらちゃんと宿題、すること。 いい? 」
「「 はあ~い 」」
「 じゃ 今 オヤツもってくるわね。 飲み物は 」
「 アタシ みるく・てぃ! おさとう いれないでね 」
「 僕も みるく・てぃ。 おさとう、三杯~~ 」
「 おか~さん おやつ なに? 」
「 ふふふ~~~ ほかほかの蒸しパンよ。 サツマイモ入り♪ 」
「「 うわ~~~い 」」
やがて運ばれてきた、お母さんお手製の蒸しパンを子供たちは お口いっぱいに
頬張る。
「 むぐ~~~~ はふはふ~~・・・ おいし~~~ 」
「 はふはふ~~ む~~~ おいし・・・ 」
「 ふふ・・・ よかった。 サツマイモ 美味しいわねえ 」
「「 うん !! 」」
「 さ 宿題 やってしまいなさい。 」
「「 ・・・ はあ~い ・・・ 」」
ちょいとぶつくさ言いつつも 子供たちはランドセルから宿題を
引っぱりだした。
「 えっとぉ ・・・ けいさんどりる のぉ~~~
ちょっとぉ~ すばる、あし じゃま!
」
「 いて ・・・ すぴかがけとばしたああ~~~ 」
「 だってアタシのあし、ふむんだもん 」
「 ふんでない~~~ 」
「 ふんだっ あっちにあし、だしてよぉ 」
「 すぴかこそ~~ 」
「 あ こらこら ・・・ ウチのコタツは広いのよ?
そんなケンカするなら すぴかはこっち側 すばるは向かい側に座りなさい。 」
母はチビ達の場所を離した。
「 え~~~ アタシ あっちがいいのに~~ 」
「 僕もぉ~~ 」
「 ケンカするんだもの。 ほらさっさと宿題しちゃえば?
今日の宿題はなあに? 」
「 え~~ けいさんどりる と かんじ。 あと ・・・ 」
「 おんどく! それから にっき。 」
「 音読? お母さんが聞くわ。 どっちからやるの? 」
「 アタシ! 」
「 僕! 」
「 それじゃ ・・・ そうね、二人で一緒に読んでみない?
これは難しいわよお~~ できるかな? 」
「 できる! すばる、 読も! 」
「 う うん ・・・ おか~さん きいてて~~ 」
「 はいはい 」
「 じゃ ・・ えっと ・・・ 69ページ ・・・
いい すばる? いっ せ~~の~~せっ 」
「 う うん 」
「「 す~ほ の しろい うま 」」
カワイイ声が一緒に響き始めた。
「 ・・・ まあ ・・・ へえ~~ ・・・ そうなの? 」
初めて聞く物語に フランソワーズは子供たちの声に熱心に耳を傾けた。
「「 ・・・ というなまえがついたのでした。 」」
おしまい~~~ と 二人は教科書を置いた。
「 ・・・ そう ・・・ 」
「 おかあさん? 」
「 ど~したの? な 泣いてる の・・・? 」
お母さんは エプロンの端で涙を拭いている。
「 え ・・・ だって 哀しいんですもの ・・・ 」
「 かなしい? あ お話 ・・? 」
「 そうよぉ~~ 可哀想 ・・・ 」
「 かわいそうだよねえ しろいうま も す~ほ も 」
「 ねえ ・・・ あ 二人ともよく読めました。 二重まるよ 」
お母さんは 音読表 に ◎ をつけてくれた。
「「 わあ~~~い 」」
「 さ 宿題終わったでしょ? お外で遊んできていいわよ 」
「 え ・・・ アタシ いい。 」
「 僕も いい。 」
「 じゃ ランドセル、お部屋に置いてきなさい。
明日の時間割もそろえておくこと。 」
「 ・・・ あとでやる~~ 」
「 僕も~ ねるまえにやる~
」
「 忘れないでよ?? 明日の朝、学校にゆく前のおお騒ぎはイヤよ? 」
「 うん ・・・ 」
「 ・・・ うん 」
「 すばる~~ 部屋から本 とってきて~~~ 」
「 僕、としょかんからかりてきた本、ここにあるからいかない。
すぴか 自分でゆけば 」
「 あ~~ その本、アタシも読みたい~~ いっしょに 」
「 やだ。 これ 僕がかりた 『 世界の鉄道 』 だもん。
すぴか 好きじゃないよ 」
「 え~~読んでみなくちゃ すきかどうかわかんないよ~~
ね~~ いっしょに読もうよぉ~~~ 」
「 ・・・ じゃあ ちょびっとだけ 」
「 わい! となり 行くからぁ~ ちょいつめて 」
「 ・・・ もう~~~ 後からきてぇ ・・・ 」
「 なに? 」
「 なんでもない。 」
すぴかはごそごそ・・・移動して弟のとなりに潜りこむ。
そして 彼が広げている本にアタマを ― そして 口も 突っ込んだ。
「 ふんふ~ん♪ あ~~~ なに、これ??? こんな色の電車あり~~? 」
「 おっかし~~~ なんで??? こんなん、あり?? 」
「 ・・・ これは二ホンの電車じゃないんだってば。 」
「 ふ~~ん 外国の電車なのかあ~~ ヘンなのぉ 」
「 ヘンじゃない。 これは スイスのとざん鉄道。 」
「 とざんてつどう?? 電車が山 のぼるんだ~~ 」
「 そ。 だからこういう形? へ~~~ がしがし登るんだ へ~~~ 」
「 ・・・ ちょっと静かにしてくれない? 僕、 読みたいんだけど 」
「 へ~~~ これ しゃしんしゅう なのに? あんた 写真 よむの?
ヘン~~~~~ 」
「 ちゃんと説明文 あるだろ? こっちのページとか 」
「 あ~~ 文章ばっか? つまんな~~い~~~ 」
「 なら 読むの、やめれば? 」
「 ふ~ん ・・・ すばる、こんな字が多い本、すきなの? 」
「 すきだよ。 珍しい世界の電車の写真ものってるし ~ 」
「 ふ~ん ・・・ 字ばっかならアタシはお話の本がいいな。
『 ルパン対ホームズ 』!! 読みたくない? 子供部屋にあるんだけど~ 」
「 僕、 この本読んでるの。 すぴか、読みたいなら取ってくれば? 」
「 ・・・ ふ~~ん アタシ この本でいい。 」
「 じゃ もうちょっとあっちいって。 僕 こっちの説明文も読みたいんだから 」
「 ふ ふ~~ん だ。 いいもん アタシ どぼ~~ん~~ 」
すばるに追い出され? すぴかはコタツに顎の下まで潜りこんだ。
「 わっは ・・・ あったか~~い~~~~~ 」
「 あ~~ 潜っちゃいけないんだ~~~ 」
「 いいじゃん。 本読んでるわけじゃないし~~ TV見てるわけじゃないし~ 」
「 おか~さんにしかられてもし~らないよ~~~ 」
「 いいもん。 アンタは本、読んでなよ 」
「 すぴか、静かにしろよ~~ 僕は読書♪ 」
「 ふ ふ~~ん アタシは ぬっくぬくぅ~~~ 」
すぴかは コタツの中でしばらくごそごそやっていたが、そのうち・・・
「 ふぁ~~~~ ・・・ 」
大きな欠伸をして かっくん すぅ~~~~ 寝入ってしまった。
「 あら? すぴかさん? こんなトコロでお昼寝はだめよ 」
「 ・・・ あ ・・・? おか~さん ・・・?
アタシ ・・・ なんかあっつ ~~~ !! 」
「 まあ 汗びっしょりよ? 冷えたら風邪 引いちゃうのよ~~
もう~ コタツに潜ってはだめ 」
お母さんは タオルでごしごし・・・汗を拭ってくれた。
「 あっは すっきり~~~ 」
「 着替える? 下着、汗で濡れてしまったかしら 」
「 うう~~~ん 平気。 アタシのぱんつはカラカラだよ~~ん 」
「 こらこら そんな大声で ・・・
じゃ 晩御飯のお買い物 行きましょ? すばるは? 」
「 え ? う~~ん 僕 ・・・ いい。 」
「 あ・・・ アタシも今日はいい、 お母さん 」
「 あら? どうしたの、二人とも。 いつもお買い物には一緒に行くでしょう?
買い物袋を持ってほしいの。 」
「 ・・・ だって 寒いんだもん。 」
「 寒いんだも~~ん・・・ 」
「 そりゃ 冬ですもの、寒いわよ。 えい!って外に出て
しっかり歩けば直に寒くなくなるわ 」
「 ・・・ 僕ぅ~~ この本 読みたい~~ 」
「 アタシもここで本 読みたい 」
子供達は コタツから出たくないようだ。
「 あらあら そりゃコタツは温かくて素敵よ?
でもねえ コタツに入りっぱなしっていうのもね?? 」
「 だあってぇ~~~ きもちい~んだも~~~ん ♪ 」
「 ウチは お日様がた~~くさん当たるからコタツから出ても温かいでしょう? 」
「 う~~ん ・・・ でも あし、さむいし~~ 」
「 手も 寒いしぃ~~~ 」
「 コドモは風の子 でしょう? ほら~~ 二人ともマフラーして手袋して
一緒にお買い物、ゆきましょ! 」
「「 ・・・ う~~ん ・・・ 」」
ぴんぽ~~ん ・・・ 玄関チャイムが鳴った。
「 あ! おと~さん? 」
「 おと~さん? わ~~~い ! 」
「 お父さんのお帰りはまだまだよ。 きっとおじいちゃまよ。 」
「 え おじいちゃま お出かけだったの? 」
「 ええ 皆が帰ってくるちょっと前に ちょっと散歩してくるから・・・ってね 」
「 ふうん おじ~~ちゃま~~~ お帰りなさい~~~ 」
すぴかが玄関に飛んでいった。
「 ふう~~~ ただいま 」
「 お帰りなさい。 あら?? どうかなさいましたか? 」
博士は 少々息を弾ませ艶々した顔をしてリビングに入ってきたのだ。
「 あ? 」
「 だって・・・なんかお顔が赤いですわ? え 汗? 」
「 ははは バレたか~~ 実はちょいとジョギングをな~ 」
「 ?? じょ ジョギング ですか?? 博士が?? 」
「 そんなに驚かんでくれよ。 ちょいとトレーニングじゃ。
ウチの前の坂。 あそこが登れなくなったら ― アウトじゃからな 」
「 ・・・ そ それは ・・・ 」
Last updated : 01,16,2018.
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********** 途中ですが
お馴染み 【 島村さんち 】 シリーズ ♪
こんな・ふつ~の日々 を過ごしているんだろうなあ~
しかし コタツは天国ですにゃ☆