『 ウチ ― (1) ― 』
ぴゅう〜〜〜〜〜〜 ・・・・・ !!
つめた〜〜〜い風が 埃を巻き上げ吹き抜けてゆく。
うわ ・・・ きゃ ・・・ 道ゆく人々はコートの襟を立て
マフラーに頤を埋め 背を丸め ― 脚をはやめた。
「 きゃ ・・・ 」
フランソワーズもお気に入りのマフラーを目の下まで引き上げた。
「 さ む〜〜い〜〜〜〜 ・・・ はやくウチに帰ろうっと・・・
寒いけど〜〜 えいっ !! 」
岬の家の若奥さんは ママちゃりのペダルを踏み込んだ。
「 う〜〜〜 風が冷たい〜〜〜 けど がんばるぅ〜〜〜 」
彼女のすうぃ〜と・ほ〜む は 急な坂を登った上。
寒い日でも 焦げそうに暑い日でも えっちらおっちら登ってゆかねばならないのだ。
そりゃ いくらサイボーグだって辛いし やっちゃらんね〜な と思うこともないわけじゃない。
けど ・・・ 。
びゅう 〜〜〜〜 また風が吹き抜けてゆく。
「 ひゃあ〜〜〜 さむ〜〜い〜〜〜〜 」
門を開け 自転車を止めるとフランソワーズはダッシュする。
バタン。 玄関のドアを開け バタンっ リビングの扉をあけ
しゅっ ぱふん。
彼女は 派手〜〜は花柄の布団の中・・・ いや コタツ に滑り込んだ。
「 〜〜〜〜 ん〜〜〜〜〜 あったか〜〜〜い〜〜〜〜〜〜
へへへ リモコンでスイッチ オン にしといたのよねえ〜〜
しっかりいい温度〜〜〜♪ 」
天板にほっぺを当てれば じんわ〜〜〜り 温かさが染み入ってくる。
「 わはは〜〜ん♪ な〜〜んて素敵なのぉ〜〜 コタツって♪
ああ ・・・ ニホンジンと結婚してよかったぁ♪ 」
この金髪碧眼のパリジェンヌは 極東の国の青年と ― まあ いろいろあって・・・
ありすぎて〜〜 結婚しなんと双子の子供たちに恵まれ
コタツ と遭遇する、という幸福をゲットしたのである。
崖の上に建つこの邸 ― 一見 ちょい古びた洋館っぽいのだが
内部は最先端の科学技術の結集、もちろん冷暖房完備だ。
四季を問わず一年中 超快適な環境で過ごすことができる。
しかし 住人達は自然と共に暮らしている。
たとえば 夏。
― カラリ。 フランソワーズはテラスへの窓を全部開けた。
しゅるり ・・・・ しゅるしゅる ・・・ 透明な風が吹いてくる。
「 あら。 クーラーよりも 窓をあけていい風を入れる方が気持ちいいわ 」
「 そうだね〜〜 ウチはいい海風が吹き抜けるものね 」
夏には彼らはほとんどクーラーなし、 扇風機くらいで過ごす。
「 ウチはすずし〜ね〜〜〜 あは〜〜 かぜ〜〜〜〜 」
姉娘のすぴかは テラスの柵にすわってびゅんびゅん風に吹かれている。
「 うふ〜〜〜〜 すずし〜〜〜 ばふばふばふ〜〜 」
ジョーの縮小版・すばる は Tシャツの裾をめくって風を追う。
「 博士 はい 冷たいお茶です。 あのお暑くないですか?
クーラー、いれます? 」
これもテラスで書物を広げるギルモア博士に声をかければ ・・・
「 おお ありがとうよ ・・・ いや 自然の風がいいよ
すばる、蝉の抜け殻は集まったかい
」
「 うん おじいちゃま〜〜 ねえ こっち、大きさがちがうし・・
あ ぜんぜん形がちがうよ? 」
「 どれどれ ・・・ ほう〜〜 すばる、この二つ どう違うかなあ
」
「 えっとぉ〜〜 ・・・・ あ! アシの付き方がちがう!
こっちはあ〜〜 」
すばるは とても熱心に観察をしている。
「 ふむふむ なるほど。 よいところに着目したなあ それで? 」
「 えっと ・・・ 」
「 ふふふ ・・・ 頑張ってね。 すぴかさ〜〜ん 冷たい麦茶 のむ? 」
母は テラスの先ッちょにいる娘に声をかけた。
「 のむ〜〜 ねえ おか〜〜さん。 なつ と ふゆ って
おそらのあおいろ が ちがうね? 」
「 はい お茶。 え そう? どうちがうの? 」
「 ん〜〜〜 っと 今は きらっきらの青。 そんで ふゆはあ ・・
つ〜〜〜んとすきとおる青 かな 」
「 まあ ステキな発見ねえ すぴかさんはなんでもよく見てるのねえ
」
「 えへ ・・・ だってキレイなんだもん 」
「 そうね お空は ・・・ とても綺麗だわ 」
「 でしょ? アタシ いつ〜〜もお空がすき! 」
母に似た金色の髪を ( もっとも すぴかはぎっちぎちのお下げに編んでいるけど )
振り回し すぴかは に〜〜っと笑う。
「 ふふふ ・・・ だからすぴかさんはお空と同じ色の瞳なのね 」
「 え〜〜〜 おか〜さんと同じ色だよぉ〜〜 」
「 あは そうねえ 」
「 うん♪ えへへ〜〜〜 」
ずずずず〜〜〜〜 すぴかは派手な音でストローを吸った。
「 あ こらあ〜 お行儀悪いわよ 」
「 えへへ〜〜 あ〜〜〜 オイシかったあ〜 」
「 風は通るけど やっぱり陽射しが熱いわねえ ・・・
葭簀 ( よしず ) を掛けましょうか。 すぴかさん 手伝って ? 」
「 うん いいよ〜〜〜 おか〜さん 」
「 よいしょっと ・・・ 」
フランソワーズは テラスの隅に立てかけてある葭簀を運びだした。
「 こっち側、 持って。 」
「 うん よいしょ〜〜 」
「 あ! ぼくがやるよ。 」
ジョーが 庭から飛んできた。 彼は庭に水撒きをしていたのだ。
「 あら ジョー 」
「 おと〜さん 」
「 危ないってば。 ぼくに任せて〜〜 」
彼はひょい、と葭簀を持ち上げた。
「 わ〜〜 おと〜さん すご〜い〜〜〜 」
「 ふふふ さすが ジョーねえ 」
「 おと〜さん すごい〜〜 」
すばるも寄ってきて 父に纏わり付く。
「 あ こら〜〜 危ないからちょっと離れて 」
「 う うん 」
「 よ・・・いしょっとぉ 〜〜〜 」
ジョーは 手際よくテラスの上の梁に葭簀を掛けていった。
陽射しは適度に遮られ 海風の涼しさがますます際立ってくる。
「 お〜〜 これはいいなあ ジョー、ありがとうよ 」
博士も目を細めている。
「 さあ これでいいかなあ 」
「 ええ ありがとう ジョー。 冷えた麦茶、どうぞ? 」
「 お ありがとう。 ・・・ んま〜〜〜 」
「 僕もぉ〜〜〜 おか〜さん おさとう 入れてぇ 」
「 はいはい 」
「 すずし〜ね〜〜〜 おと〜さん。 ウチはさあ 学校よかすずしいや 」
「 ウン! 学校さあ く〜ら〜 いれてるから 窓、開けちゃいけないんだ 」
「 ね〜〜 風がきもちい〜〜のにね〜〜 」
子供たちは Tシャツの裾をひゅるひゅる風に吹かれはしゃいでいる。
「 クーラー いれるかい? 暑ければ ・・・ 」
「「 あつくないもん 」」
「 博士? ご無理なさらないでくださいね お暑ければクーラー いれます。 」
「 このままがよいよ。 チビさん達と一緒じゃ 」
「 あ それじゃ晩御飯はテラスでいただきましょうか 」
「 お いいねえ〜〜
」
「 わあ〜〜 お外でごはん? わ〜〜い 」
「 すご〜〜い〜〜〜 星がみえるかなあ 」
「 うむ 夏の星座を見ようなあ 」
「 あ そうだ〜〜 今日のオヤツはね〜 トクベツなんだよ? 」
ジョーがにこにこ・・・子供たちを見回す。
「 え〜〜〜 なに〜〜〜 おと〜さん 」
「 なに〜〜 なに〜〜 」
「 えへへ なにかなあ〜? ヒント。 夏の果物だよ〜 」
「 夏の? ん〜〜〜 ・・・ あ すいか! 」
「 スイカだあ〜〜〜 」
「 大当たり♪ 今朝ね〜 畑から収穫したとれとれのスイカさ 」
「 わあ〜〜い♪ アタシ、スイカだいすき〜〜〜 」
「 僕も〜〜〜 ね おと〜さん トクベツってぇ〜 とくべつおっきいの? 」
すばる が茶色の瞳をくりくりさせつつ聞いてきた。
「 あは よく聞いてたね〜〜 大きさは ・・・ まあ普通だな。 」
「 それじゃ〜 トクベツあまい の? 」
「 多分甘いと思うけど それは食べてみないとわからないよ 」
「 え〜〜〜 じゃあ ・・・? 」
「 ふっふっふ〜〜 そのスイカは 今どこにいるかな? 」
「 え れいぞうこ でしょ? 」
「 ぶっぶ〜〜〜 」
「 え 〜〜 どこ??? 」
「 それは ね。 井戸 さ。 」
「 ? い ど? なに それ 」
「 いど ってなあに? 」
子供たちは きょとん、としている。
「 あらあ〜〜 この邸に井戸があるの? 」
「 ほっほ ・・・ ジョー 知っておったのかい 」
オトナ達も目を丸くする。
「 はい 博士。 あのね、すぴか すばる。 ガレージの裏にね、井戸が
あるんだよ。 今まで使ってなかったんだけど すごく冷たいお水なんだ 」
「 いど って お水があるとこ? 」
「 すいどう とはちがうの ? 」
「 井戸はねえ ふか〜〜〜く掘った穴なんだ。 した〜〜〜の方にお水がある。
昔、水道がなかったころは 井戸からお水を汲んでいたのさ。 」
「 くむ・・・って なに? 」
「 あ お水をね バケツみたな物使って上までもってくることなんだ。
そのお水は 夏はきんきんに冷えてて 冬には温かいのさ 」
「 ふう〜〜ん アタシ 井戸、みたい! 」
「 僕も いど みる! 」
「 わたしも見たいわ〜〜 ガレージの裏? 」
「 じゃあ 皆でゆこうか? もうね スイカが冷やしてあるんだ 〜〜 」
「 「 うわ〜〜〜 い 」」
「 わたしも わ〜〜〜い♪ 」
それじゃ・・・と ジョーはチビ達とそのお母さんをつれて 井戸見学 に行った。
― そして その日のオヤツ・タイム〜〜
「 ほうら ・・・ 井戸から今、 上げてきたよ〜 」
「 うわあ〜〜〜 ・・・ つっめた〜〜〜 」
「 つめたっ! ねえ いどのお水 こおりなの? 」
「 あはは 氷じゃあないよ。 さ〜〜 これから切り分けるからね〜〜
お父さんは まな板と包丁をもってくるから すぴか、お皿を出してくれるかな。
すばる 布巾とタオルを持ってきて 」
「「 はあ〜〜い 」」
子供達は 先を争って父の手伝いをする。
「 それじゃ 切るね〜〜〜 」
「「 ん ・・・ !! 」」
サク ッ ・・・・ トン ・・・ !!
大玉のスイカは ぱっか〜〜〜んと割れ 真っ赤な果肉を見せる。
「 う わ ♪ おいしそ〜〜〜 」
「 おいしそ〜〜〜 」
「 ほらほら ・・・ 皆にくばるよ〜〜 」
サクサク 半月に切り分け皿に盛った。
「「 いっただっきまあ〜〜〜す 」」
かぷり と かぶり付き ―
お いし〜〜〜〜 !! ひえひえ〜〜〜〜!!
「 うむ ・・・ 冷えすぎてないから余計に美味いのじゃな 」
「 本当・・・ 冷たさと甘さがちょうどいい感じ。 」
「 ね? 自然の力で冷やしたからね〜〜 」
オトナ達も 舌鼓をうつ。
「 井戸って初めてみたけど ・・・ なんか怖いくらい深いのね 」
「 うん だからこんなに冷たい水なんだろうね。
ま〜 飲めないけど果物なんか冷やすのにはちょうどいいよ。 」
「 うむ うむ ・・・ 人々は上手に自然と付き合っていたのだなあ 」
「 そうですねえ。 ウチもできるだけ自然に暮らしたいわ 」
「 ここは十分快適だよね 」
「 うふふ ・・・ ウチは最高よ♪ 」
暑い日々も 彼らはその暑さと上手に付き合い過ごしていた。
そして 冬。
ひゅるるるる〜〜〜〜〜 ・・・
温暖な土地だが 冬にはやはり冷たい風が吹いてくる。
人々はヒーターの温度を ぐっと上げる時期となる が。
岬の邸の人々は昼間はヒーターはいれない。
大きな窓のリビングは 冬でもいっぱいに陽光が満ち、温かいのだ。
そして ―
「 た だいまあ〜〜〜 」
「 ・・・ ただいまぁ 」
チビ達もお顔を真っ赤にして帰ってくる。
「 はい お帰りなさい すぴか すばる 」
お母さんはいつだって笑顔で玄関のドアをあけてくれる。
「 アタシ〜〜 寒いからぁ〜〜 走ってきた! 」
「 ・・・ 僕はぁ〜 ゆっくり歩いてきたんだ〜 寒かったあ 」
「 寒かったでしょう? さ 手を洗ってウガイして 」
「 オヤツ! 」
「 僕ぅ〜〜 びっくりまん・ちょこ〜〜 」
ダダダダ 〜〜〜〜
チビ達はランドセルを背負ったままバス・ルームに駆けていった。
「 あらら ・・・ まあ いいか。 ちゃんと手、洗うのよぉ〜〜 」
「 「 うんっ !! 」」
ダダダダ 〜〜〜〜
ランドセルと共にチビ達は リビング目指し駆けてきた。
「 アタシ〜〜〜 いっちばんっ ! 」
「 僕もぉ〜〜〜 いちばん〜〜〜 」
バタンッ ! ふぁさ〜〜〜 しゅるっ どん。
すぴかとすばるはリビングの真ん中にある コタツ に 滑り込んだ。
「「 ん〜〜〜〜〜 あったか〜〜〜〜〜〜〜 」 」
「 あらら ・・・ 二人ともランドセル、 お部屋に置いてきたら ? 」
「 う〜〜 いい。 アタシ、 ここでしゅくだい するから 」
「 僕もぉ 」
「 あら そう? それなら オヤツの前に宿題、やっちゃう? 」
「 ・・・ う ・・・ オヤツ たべながら〜〜 だめ? 」
「 僕ぅ〜 おなか すいたぁ〜〜 」
「 それじゃ 先にオヤツね。 食べたらちゃんと宿題、すること。 いい? 」
「「 はあ〜い 」」
「 じゃ 今 オヤツもってくるわね。 飲み物は 」
「 アタシ みるく・てぃ! おさとう いれないでね 」
「 僕も みるく・てぃ。 おさとう、三杯〜〜 」
「 おか〜さん おやつ なに? 」
「 ふふふ〜〜〜 ほかほかの蒸しパンよ。 サツマイモ入り♪ 」
「「 うわ〜〜〜い 」」
やがて運ばれてきた、お母さんお手製の蒸しパンを子供たちは お口いっぱいに
頬張る。
「 むぐ〜〜〜〜 はふはふ〜〜・・・ おいし〜〜〜 」
「 はふはふ〜〜 む〜〜〜 おいし・・・ 」
「 ふふ・・・ よかった。 サツマイモ 美味しいわねえ 」
「「 うん !! 」」
「 さ 宿題 やってしまいなさい。 」
「「 ・・・ はあ〜い ・・・ 」」
ちょいとぶつくさ言いつつも 子供たちはランドセルから宿題を
引っぱりだした。
「 えっとぉ ・・・ けいさんどりる のぉ〜〜〜
ちょっとぉ〜 すばる、あし じゃま!
」
「 いて ・・・ すぴかがけとばしたああ〜〜〜 」
「 だってアタシのあし、ふむんだもん 」
「 ふんでない〜〜〜 」
「 ふんだっ あっちにあし、だしてよぉ 」
「 すぴかこそ〜〜 」
「 あ こらこら ・・・ ウチのコタツは広いのよ?
そんなケンカするなら すぴかはこっち側 すばるは向かい側に座りなさい。 」
母はチビ達の場所を離した。
「 え〜〜〜 アタシ あっちがいいのに〜〜 」
「 僕もぉ〜〜 」
「 ケンカするんだもの。 ほらさっさと宿題しちゃえば?
今日の宿題はなあに? 」
「 え〜〜 けいさんどりる と かんじ。 あと ・・・ 」
「 おんどく! それから にっき。 」
「 音読? お母さんが聞くわ。 どっちからやるの? 」
「 アタシ! 」
「 僕! 」
「 それじゃ ・・・ そうね、二人で一緒に読んでみない?
これは難しいわよお〜〜 できるかな? 」
「 できる! すばる、 読も! 」
「 う うん ・・・ おか〜さん きいてて〜〜 」
「 はいはい 」
「 じゃ ・・ えっと ・・・ 69ページ ・・・
いい すばる? いっ せ〜〜の〜〜せっ 」
「 う うん 」
「「 す〜ほ の しろい うま 」」
カワイイ声が一緒に響き始めた。
「 ・・・ まあ ・・・ へえ〜〜 ・・・ そうなの? 」
初めて聞く物語に フランソワーズは子供たちの声に熱心に耳を傾けた。
「「 ・・・ というなまえがついたのでした。 」」
おしまい〜〜〜 と 二人は教科書を置いた。
「 ・・・ そう ・・・ 」
「 おかあさん? 」
「 ど〜したの? な 泣いてる の・・・? 」
お母さんは エプロンの端で涙を拭いている。
「 え ・・・ だって 哀しいんですもの ・・・ 」
「 かなしい? あ お話 ・・? 」
「 そうよぉ〜〜 可哀想 ・・・ 」
「 かわいそうだよねえ しろいうま も す〜ほ も 」
「 ねえ ・・・ あ 二人ともよく読めました。 二重まるよ 」
お母さんは 音読表 に ◎ をつけてくれた。
「「 わあ〜〜〜い 」」
「 さ 宿題終わったでしょ? お外で遊んできていいわよ 」
「 え ・・・ アタシ いい。 」
「 僕も いい。 」
「 じゃ ランドセル、お部屋に置いてきなさい。
明日の時間割もそろえておくこと。 」
「 ・・・ あとでやる〜〜 」
「 僕も〜 ねるまえにやる〜
」
「 忘れないでよ?? 明日の朝、学校にゆく前のおお騒ぎはイヤよ? 」
「 うん ・・・ 」
「 ・・・ うん 」
「 すばる〜〜 部屋から本 とってきて〜〜〜 」
「 僕、としょかんからかりてきた本、ここにあるからいかない。
すぴか 自分でゆけば 」
「 あ〜〜 その本、アタシも読みたい〜〜 いっしょに 」
「 やだ。 これ 僕がかりた 『 世界の鉄道 』 だもん。
すぴか 好きじゃないよ 」
「 え〜〜読んでみなくちゃ すきかどうかわかんないよ〜〜
ね〜〜 いっしょに読もうよぉ〜〜〜 」
「 ・・・ じゃあ ちょびっとだけ 」
「 わい! となり 行くからぁ〜 ちょいつめて 」
「 ・・・ もう〜〜〜 後からきてぇ ・・・ 」
「 なに? 」
「 なんでもない。 」
すぴかはごそごそ・・・移動して弟のとなりに潜りこむ。
そして 彼が広げている本にアタマを ― そして 口も 突っ込んだ。
「 ふんふ〜ん♪ あ〜〜〜 なに、これ??? こんな色の電車あり〜〜? 」
「 おっかし〜〜〜 なんで??? こんなん、あり?? 」
「 ・・・ これは二ホンの電車じゃないんだってば。 」
「 ふ〜〜ん 外国の電車なのかあ〜〜 ヘンなのぉ 」
「 ヘンじゃない。 これは スイスのとざん鉄道。 」
「 とざんてつどう?? 電車が山 のぼるんだ〜〜 」
「 そ。 だからこういう形? へ〜〜〜 がしがし登るんだ へ〜〜〜 」
「 ・・・ ちょっと静かにしてくれない? 僕、 読みたいんだけど 」
「 へ〜〜〜 これ しゃしんしゅう なのに? あんた 写真 よむの?
ヘン〜〜〜〜〜 」
「 ちゃんと説明文 あるだろ? こっちのページとか 」
「 あ〜〜 文章ばっか? つまんな〜〜い〜〜〜 」
「 なら 読むの、やめれば? 」
「 ふ〜ん ・・・ すばる、こんな字が多い本、すきなの? 」
「 すきだよ。 珍しい世界の電車の写真ものってるし 〜 」
「 ふ〜ん ・・・ 字ばっかならアタシはお話の本がいいな。
『 ルパン対ホームズ 』!! 読みたくない? 子供部屋にあるんだけど〜 」
「 僕、 この本読んでるの。 すぴか、読みたいなら取ってくれば? 」
「 ・・・ ふ〜〜ん アタシ この本でいい。 」
「 じゃ もうちょっとあっちいって。 僕 こっちの説明文も読みたいんだから 」
「 ふ ふ〜〜ん だ。 いいもん アタシ どぼ〜〜ん〜〜 」
すばるに追い出され? すぴかはコタツに顎の下まで潜りこんだ。
「 わっは ・・・ あったか〜〜い〜〜〜〜〜 」
「 あ〜〜 潜っちゃいけないんだ〜〜〜 」
「 いいじゃん。 本読んでるわけじゃないし〜〜 TV見てるわけじゃないし〜 」
「 おか〜さんにしかられてもし〜らないよ〜〜〜 」
「 いいもん。 アンタは本、読んでなよ 」
「 すぴか、静かにしろよ〜〜 僕は読書♪ 」
「 ふ ふ〜〜ん アタシは ぬっくぬくぅ〜〜〜 」
すぴかは コタツの中でしばらくごそごそやっていたが、そのうち・・・
「 ふぁ〜〜〜〜 ・・・ 」
大きな欠伸をして かっくん すぅ〜〜〜〜 寝入ってしまった。
「 あら? すぴかさん? こんなトコロでお昼寝はだめよ 」
「 ・・・ あ ・・・? おか〜さん ・・・?
アタシ ・・・ なんかあっつ 〜〜〜 !! 」
「 まあ 汗びっしょりよ? 冷えたら風邪 引いちゃうのよ〜〜
もう〜 コタツに潜ってはだめ 」
お母さんは タオルでごしごし・・・汗を拭ってくれた。
「 あっは すっきり〜〜〜 」
「 着替える? 下着、汗で濡れてしまったかしら 」
「 うう〜〜〜ん 平気。 アタシのぱんつはカラカラだよ〜〜ん 」
「 こらこら そんな大声で ・・・
じゃ 晩御飯のお買い物 行きましょ? すばるは? 」
「 え ? う〜〜ん 僕 ・・・ いい。 」
「 あ・・・ アタシも今日はいい、 お母さん 」
「 あら? どうしたの、二人とも。 いつもお買い物には一緒に行くでしょう?
買い物袋を持ってほしいの。 」
「 ・・・ だって 寒いんだもん。 」
「 寒いんだも〜〜ん・・・ 」
「 そりゃ 冬ですもの、寒いわよ。 えい!って外に出て
しっかり歩けば直に寒くなくなるわ 」
「 ・・・ 僕ぅ〜〜 この本 読みたい〜〜 」
「 アタシもここで本 読みたい 」
子供達は コタツから出たくないようだ。
「 あらあら そりゃコタツは温かくて素敵よ?
でもねえ コタツに入りっぱなしっていうのもね?? 」
「 だあってぇ〜〜〜 きもちい〜んだも〜〜〜ん ♪ 」
「 ウチは お日様がた〜〜くさん当たるからコタツから出ても温かいでしょう? 」
「 う〜〜ん ・・・ でも あし、さむいし〜〜 」
「 手も 寒いしぃ〜〜〜 」
「 コドモは風の子 でしょう? ほら〜〜 二人ともマフラーして手袋して
一緒にお買い物、ゆきましょ! 」
「「 ・・・ う〜〜ん ・・・ 」」
ぴんぽ〜〜ん ・・・ 玄関チャイムが鳴った。
「 あ! おと〜さん? 」
「 おと〜さん? わ〜〜〜い ! 」
「 お父さんのお帰りはまだまだよ。 きっとおじいちゃまよ。 」
「 え おじいちゃま お出かけだったの? 」
「 ええ 皆が帰ってくるちょっと前に ちょっと散歩してくるから・・・ってね 」
「 ふうん おじ〜〜ちゃま〜〜〜 お帰りなさい〜〜〜 」
すぴかが玄関に飛んでいった。
「 ふう〜〜〜 ただいま 」
「 お帰りなさい。 あら?? どうかなさいましたか? 」
博士は 少々息を弾ませ艶々した顔をしてリビングに入ってきたのだ。
「 あ? 」
「 だって・・・なんかお顔が赤いですわ? え 汗? 」
「 ははは バレたか〜〜 実はちょいとジョギングをな〜 」
「 ?? じょ ジョギング ですか?? 博士が?? 」
「 そんなに驚かんでくれよ。 ちょいとトレーニングじゃ。
ウチの前の坂。 あそこが登れなくなったら ― アウトじゃからな 」
「 ・・・ そ それは ・・・ 」
Last updated : 01,16,2018.
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********** 途中ですが
お馴染み 【 島村さんち 】 シリーズ ♪
こんな・ふつ〜の日々 を過ごしているんだろうなあ〜
しかし コタツは天国ですにゃ☆